その旗の下、西欧はもとより途上国の多くが危機感を高め、グローバル企業が主導する「開発」の名による自然破壊に抵抗している。国土や海が乱開発されて、生活自体が危機に瀕しているところが少なくないからだ。
「ネイチャーポジティブ(NP)」とは、生物多様性の減少を増加に反転(ポジティブに)させるということだが、それはある意味で象徴的な概念である。どういうことか。
地球温暖化対策として温室効果ガス(GHG)全てに対策をなすべきだが、その象徴的指標としてCO2に着目して「カーボンニュートラル」が謳われている。また、資源枯渇対策と環境汚染対策を同時に打開するための「サーキュラーエコノミー(循環経済)」化を推進するとして、「プラスチックの再資源化」が目玉になっている。それらと同様だ。つまり、「ネイチャーポジティブ」は、「〝自然〟の回復」の象徴的な指標として「生物多様性」を謳っているのではないだろうか。
私は、ビジネス側から「ネイチャーポジティブ」を見て、基本的にこれを現実論として、「従来資源の見直し」と「〝自然〟資源の再評価」として理解すべきではないかと主張をしている。
とはいえ、われわれビジネス側から見ても、〝自然〟や〝緑〟と真摯に向き合うべきなのだが、ではその議論において、〝自然〟をどう捉えればよいのだろうか。
“自然”と“天然” そして“自然”と“人工”
“自然”や“緑”といっても、 “天然”の森林や、里山や農地ばかりではない。かなり管理された街中の公園や墓地から、ビルの屋上を埋める“緑”やオフィス内の“緑”まで、あるいは大都会の下町の路地裏に並べられた鉢植えからマンションのベランダガーデニングまで、さらには完全に制御された“緑”である盆栽まで…、その形態と機能は多岐にわたる。これらの “緑”をそれぞれどう位置付ければよいのだろうか。
まず、仮の起点として、環境省に準じて、人為的な介入をしていない“野性(wild)”、つまり〝環境〟本来の構成物である“天然”資源によって形成される環境を「第1次自然環境」と呼び、農地や里山(里海)など、人手を入れた“天然”っぽい環境は「第2次自然環境」と呼ぶことにしよう。そうすると、昨今の熊問題は、第1次自然に生息していた熊が、緩衝地帯だった里山や農地といった第2次自然を超えてさらに都市部へ進出してきたと理解され得る。
自然環境と対極にあるのが、都市などの人工の建築物による「建造環境」だ。生物が自らの生活環境として建造物をつくることは、例えばビーバーのダムやシロアリの塚やハチの巣など、珍しくはない。基本的には生物自らの手による自身の環境づくりだ。だが、人間の「巣」としての建造物は「家」だけにとどまらない。生活空間から交通空間等のインフラまで、その土木建築は質量共にケタ違いであり、その影響は他の生物に多大な影響をあたえている。
いまや、地球上のあらゆるところに人の手が入っている。その程度にはバラツキが大きくあるが、生物がほとんど皆無のコンクリート建造物がある一方で、100%自然(完全野生/荒野)といえる場所など、もう地球上にはほとんどないとも言える。
第1次自然環境を破壊して都市化する場合もあれば、第2次自然環境である農地を転用して住宅地などにする場合などもある。いわゆる「地域開発」の名の下で、人間は自らの手で“自然”のあり方と景観を根本的に変えてしまうのだ(他の多くは、“自然”変動や“自然災害”によるものだ)。これら、人類が作為的に構築、整理整頓した地域は、「自然環境」に対して「人工環境」と呼べるだろう。
地域開発と称して、世界にはいまだに森林部を削って都市開発する地域もある。だが、日本では昨今、そのような開発地域は土砂崩れや地滑りを起こすなどと、問題視されている。線状降水帯の発生等も重なり、多く災害が複合的になってきているときに、今さら原生林や森林的な第1次〝自然〟を開拓して第2次“自然”、あるいは都市部や工業地域を造成することは、時代的に適切なのか。
今後の「地域開発」とは、基本的に、昭和に森林を拓いて開発してきた都市部の団地(例えば東京・多摩地区)の「再開発」を意味すべきではなかろうか。また既存の「都市」についても、「新たな都市」を開発するのではなく、新たな「公園都市」に「再開発」することが求められているのではないか。
つまり、その時にどれだけ適切な“緑”を入れ込めるかが重要なのではないか。加えて、昨今の猛暑・酷暑時代に、“緑”は「都市の清涼装置」であると位置付け直されるべきなのだ。
“緑”を「第n次“自然”」として整理
野生という「天然的“自然”環境」から、人手による自然がほとんどない「人工的な“建造物”環境」まで、それらの間には、当然濃淡的な“緑”の段階がある。私は、それらの段階を「第n次自然環境」として、次のように整理してみてはどうか、と考えている。いかがだろうか。
①「純天然」(第1次自然)=天然野生的“自然”
②「準天然」(第2次自然)=農地や里山や人工林 緑は多いが多様性は高くはない
③「準自然」(第3次自然)=都市や郊外の公園や墓地の“緑”
④「半自然」(第4次自然)=下町の露地の鉢植えやベランダガーデニング等の“緑”
⑤「微少的自然」(第5次自然)=高度管理されたオフィス内の緑や生け花、高度制御された盆栽
⑥「人工加工的“自然”」(第6次自然)=ドライフラワーや押し花等の加工された“緑”
⑦「人造的“自然”」(デジタル自然)=デジタルによるバーチャルな偽装的“自然”
人の手が入った第2次から第5次までの“自然”の利活用と、それらの“自然”の維持・強化を両立させることは、いわば全体としての“自然”を増加させる活動ではないかと、私は見ている。これらの位置付けにより、人間が“自然”に与える負荷(環境負荷)を軽減し、経済発展と環境の維持・強化を両立させる「持続可能な社会」の構築を目指すための、一つの枠組みを構成し、指標化ができるのではなかろうか。
なお、このリストの脇には、コンポストなどの再生肥料化へ向かう“自然”を位置付けていく予定である。
ただし、これらは試論なので、多くの方のご意見を伺いたい。
(本稿続く)































