古琴:江戸から令和への旅も1年以上経ったね。そろそろ飽きたのではないかな。
八:いや?たまげたことばかりで、飽きている閑なんぞないっすよ。
熊:最初は慣れなかったけど、暑い夏にビールって酒、うめぇな。
八:そうそう、酒がいろいろあるのには吃驚したな。
熊:酒と飯は、江戸へ戻るより、このまんまの方がよいかもな。
八:またカミサンにどやされるぞ(パシっ)。
蔦重:ところで、政(まつりごと)があっちいったり、こっちいったりってぇのは変わりませんね。振り回されるのは、俺達民草なのには変わりがねぇ。
八:あの天子さまの身分がどうのこうのって話は、なんであ?なっちまったんですかね? 
 お偉いさんが静かに話し合って「総意」ってぇのが決まったと思ったら、それには入っていなかった話を、いきなり筆頭老中の姐さんが差し込んできたって聞きやした。しかも、決める話合いは僅か1日とか。そのまんま決まっちまったなんて、とんでもない話に聞こえますけど。
古琴:今の世では、民草も国民と呼ばれるし、天子様も天皇と呼ばれる。ただ天皇を継げる血筋の人は極めて限られていて、途絶えかねない。そこで天皇家の持続可能性を高めるために「皇室典範」という式目みたいな決め事を変えようとなった。
 それにしても乱暴な変更をしたな。やたら困ったことだらけだ。
八:姐さんが、養子の子が引き継げると勝手に入れ込んだことですね。

男社会を続けるのか



蔦重:何より吃驚するのが、これだけ女が頑張っている世の中になっているってぇのに、俺達の時代よりもっと「男社会」にしちまうってことだな。
古琴:今回、女の皇族は婿さんをもらっても皇室に残ることができるようになったけど、それは一代限り。また旦那と子供は一般民草のままだそうだ。昔の貴族様の男の子孫が今は民草だとしても、その男性を養子にして、その養子がもうけた男子が皇位を継げるようにするって言うけどね…。
蔦重:今の血筋は600年前、室町の頃に分かれたものですよね。それが80年前に民草と同じになったと聞きました。当時の男系は、今の天皇様とは36~38親等も離れているとか。
熊:それじゃ、何が系統だかよくわかんねぇな。
八:殿中で成立したので、もう後戻りできねぇってことですか?
蔦重:いや、決まったことを実際にやるかどうか、それを止められるかもしれねぇとは聞いたぜ。けどな、養子を取るなんてことを白紙に戻しゃ良いんじぇねえの?
古琴:たしかに、女性皇族が結婚後に皇室に残ることができるようにはなった。ただし、夫と子は一般人であって「宮家」ではないので、一代で途絶えてしまう。
熊:やっぱ、女だと不利ってことか。
八:かかぁがしっかりした方が、うまくいくこともあるんだけどなぁ。熊んところも、俺のところ、蔦のところもそうだろ。
古琴:私のところもそうだね。
蔦重・八・熊:えっ!
古琴:男か女かというより、最初に生まれた子供に継がせるってのが素直なんじゃないかね。江戸の頃もあったよ。
蔦重:娘には婿をいれる。旦那様ではなく、おかみさんが家の長。
八:今回の女の扱いは、仕事をさせられるだけさせる、ってな感じで、ちょっとひでぇな。
古琴:今の天皇は「国民統合の象徴」。つまり民全体を表すお方だ。最近の皇室の方々は、災害などで民草に寄り添って、皆の幸せを祈ってこられた。そうした姿が敬意を集めて、日の本は安定してきた。だから、男だろうが、女だろうが、しっかりした天皇一族がおられることが何よりなんだけどね。
蔦重:そう、それが不可解だね。
 20年前に殿中で、旧宮家の皇籍復帰は「極めて困難だ」と否定していたし、「女性・女系天皇への途(みち)を開くことが不可欠」としていた。にも関わらず、今回は「養子で何とかする」という姑息な議論がまかり通った。
 下手に、男優位の社会を続けていては、そもそも「国民統合の象徴」としての制度自体を傷つけてしまいかねない。
八:別の皇室ご一家ができてしまうことすらあるかも。
熊:南北朝に分かれたように、男女朝に分かれたら面白くなるんじゃねぇか?
八:(パシっ)。
蔦重:いや実際、日の本自体を揺るがせかねないかなぁ。
古琴:信長や秀吉や家康に倣って、姐さんを詠めば、「鳴いたとて、無視を決め込め、ホトトギス」かな。自分が頑張っているからって、他の具申や建議を聞かないようでは行き詰まるね。

「両敬」「通路」「不通」



八:日の本はこんな有り様だけど、相変わらず、米藩のトラ殿様は好き放題らしいな。
蔦重:そこで「両敬」って言葉を思い出したんだ。俺達の頃には「両敬」ってのがありやしたよね。
熊:お前は、刑を軽くして欲しいから「量刑」に関心があるんだな。
蔦重:その量刑じぇねえよ(パシっ)。
古琴:さすが耕書堂。武家でも町人でも、家同士がいろんな場面で「同等の敬意と礼儀」で接することだね。
 上下や身分が厳しかったので、多くの場合は、身分の低い方が高い方を形の上でも敬うのが普通だった。だが格が違っても、互いに敬意を表して平等な付き合いを保つこともあった。それが「両敬」という友好の証(あかし)だな。
蔦重:大名同士には「両敬」以外に、「通路」や「不通」ってのもあるそうですね。
古琴:一応儀礼にかなった対応をする間柄を「通路」。そういう儀礼的な対応すらしない間柄を「不通」と呼ぶ。
八:ってことは、令和の藩同士の関係も区分けできるかも。
古琴:そうだね。米藩と伊朗(イラン)藩は「通路」関係だけど、中国藩とは一応「両敬」のフリをしている。
八:露藩と烏克蘭(ウクライナ)藩は、ほぼ「不通」ってことか。
熊:え、あれで「普通」なのかぁ?
八:字が違うぜ(パシっ)、紛争しているところは「両敬」は死んでもできないですね。
蔦重:露藩は、プー殿様はもとより、「ノーメンクラトゥーラ」ってぇ連中が、とにかく保身のために、戦(いくさ)を続けようとしていると聞いています。
熊:え、「能面の暗い面」って何だ?
蔦重:(パシっ)、殿中のお偉方たちのことだよ。
古琴:我が国でも殿中がしっかりしないといかんな。姐さんが「やりたい放題」で暴れても、誰も諫めないと、大変なことになってしまいかねないね。
―――――――――――――――――――――――――
 毎度の戯れ言・与太話、お粗末さまでございました。