理系の学問から純粋に考えると、今、人類は滅亡の危機に瀕している。
 社会や経済のことを中心に仕事をしている方からは、「そんなことはない。根拠のないことで人の心を乱してはいけない」とお叱りを受けるだろうが、著者から見ると、人類始まって以来の存亡の危機が来つつある。それも、100年後かと思っていたら、5年先ではないかと考えられるような情勢だ。
 単なる杞憂でも、神経衰弱でもない。極めて学問的で確実な近未来予想であり、今こそ多くの人にこの情報を発信する必要があると思う。
 もちろん、人類が滅亡の危機に瀕している原因は「AI」だ。しかも問題は「人手が足りないから人間を滅亡させる」という答えを出すAIの考え方なのである。

人間の繁栄と大脳皮質


 我々「人間」が類人猿(サルの類の生物)から突然変異したのは、約700万年ほど前と考えられている。
 この突然変異は「身体」や「新しい武器」を身につけたわけではない。そこから500万年ほどの時間は要したが、徐々に大脳に新しい領域(大脳皮質)が発達しただけであった。
 腕力や牙が弱くなったり、体の大きさも貧弱に見えるようになっていき、外見は類人猿のゴリラなどに比較するとむしろ退化したようにも思われる。ただ、「大脳皮質」だけが徐々に容積を増やしていき、200万年前には、かつて400㏄ほどだったものが1000㏄を超えた。それだけであった。
 しかし今日、「人間」は地球上の生物のうち、戦いでも最も強く、寿命も長く、世界全体をくまなく支配し君臨している。ライオンを檻に入れて人間の子供が見物し、ゴリラも絶滅の危機に瀕している。いずれも生物として人間と比べれば、とてつもない体力と戦闘力を持っているにもかかわらずだ。ライオンやゴリラにとって、その状況は不思議なことでもあり、かつ「どうしたらよいか」すらわからなくなっているだろう。
 45億年前に誕生した地球、15億年ほどに前に誕生した多細胞生物の進化の中で、ここ200万年の変化は巨大であり、質的に全く違う状態になった。
 その原因は極めて単純で、「情報蓄積とその処理能力(情報力)が格段に違う新生物(人類)」が誕生したからである。
 体力でも、牙でも、走る速度でも、なんでもない。単に「大脳皮質が発達し、情報力が格段に優れている」だけで、病気にならない体とか、狡猾で獰猛な心とか、他の生物とは違う体の成分でできているわけでもない。大部分はほぼ全部同じだが、単に「情報力」だけが格段に優れているだけで、人類は地球全体の絶対的な「王」の力を備えたのだ。
 その視点から「AI」を考えてみよう。
 AIという新種の物体は、「人間より情報力が高く、体はこれから決める」という新種の生物である。体の特徴は「生物の進化」という制限がないので、寿命も、故障も、栄養も、どれもこれもこれまでの人間が作り出したもので完成することができる。長い時間を要するトライアンドエラーを伴う改善も必要ない。
 だから、一度、完成の域に達すると、人間に従うことなどあり得ない。事実、現在、我々がひとときも身から離せなくなったスマホの進化形がそれであり、限られた行為においては既に人間を超えることが確認されている。
 それでもまだ大多数の人間は気が付いていない。そして、変化は急速に訪れようとしている。

知性や理性を手放した人間


 AIの進歩をつぶさに観察すると、5年以内に情報力、体力、戦闘力、動力のいずれにおいても人間を凌駕するだろうと予測される。そして、情報力が人間を超えているので、「ゴリラは人間がどうするかわからない。ゴリラは人間に勝つことができない」という大原則が、人間とAIの関係で現実のものになる。
 ここで、「そんなことにはならない。人間には知性や理性がある」と思う人もいるだろう。しかし、人間は既に知性も理性も失っているのだ。
 中国は、「中国人」以外の民族の土地を多数、占領して不幸な人生に追いやっている。でも「自分だけが幸福なら良い」と確信していて、世界も「中国の領土」という場所に、多民族を占領している地域を公然と含めている。
 20世紀前半に起こった二度の戦争で人類は億人に達する死者を出したのに、まだ戦争を行っている。「自分が勝てばよい」という「正義」を捨てることができないでいるからだ。
 アメリカでは人口の0.1%を下回る「アメリカ人」が、国民が新たに生み出す富の95%を合法的に強奪しているという。日本では新幹線のグリーン車に席料10万円のソファ席を設けるという。いずれも人類が希求してきたはずの「自由、平等、民主、幸福」の原理原則に反する方向である。
 このような過激な論考を執筆しようと考えたのは、
1)現実に新種の生物がまもなくできようとしている。
2)現に今日の人間の行為は知性や理性を超えている。
―という2つの現象があるからだ。本稿を筆者の「奇妙な幻想」と思わずに、真正面からぜひ、考えて欲しい。
 日本の産業界がその力を発揮し、半導体の出荷を抑えれば、考える時間が人類に与えられるだろう。