今国会も期会末まで残り1ヵ月を切り、重要法案の審議を巡って与野党の攻防も激しさを増しつつあると言っていいだろう。その中でも注目なのは、いわゆる「中傷動画問題」を追及材料とする、高市政権に対する野党の激しい攻勢だ。
具体的には、高市首相の公設秘書が昨年秋の自民党総裁選や今年年初の衆院選で相手候補を貶めるような動画作成を依頼したとする疑惑だ。とは言ってもこの野党による疑惑追及の動きは、はっきり言って難癖に近いものがある。
そもそも野党の追及材料は、週刊文春などのマスコミ報道だけ。しかもその報道も信ぴょう性という点でかなり疑わしいのだ。週刊文春や共同通信が疑惑の証拠として公表した誹謗中傷動画のうちの一部の動画が、選挙後に捏造されたものだったことが明らかにされてしまった。
筆者の見るところ、野党の追及材料は基本的にそうしたマスコミ報道だけというのが実情。しかも国民の多くは、そのことにとっくに気がついていると言っていいだろう。
去る6月22日の衆参両院の集中審議で高市総理は、一連の「疑惑」に関する野党の追及に対し、秘書の陳述書と相手企業から提出を受けた企画書の国会提出をもって答弁に代えさせていただきたい、という対応をとったのだが、これも結果的に野党を勢い付かせることとなった。つまり野党サイドに言わせると、こうした高市総理の対応は答弁拒否に当たる、ということになる。
しかし野党サイドの追及も、一体何を聞きたいのか、具体的にどのような疑惑を明らかにしたいのか、質問内容を見る限りにおいて、サッパリ要領を得ない。
確かに総理秘書を巡る疑惑に関する国会質問に対して、総理が秘書の陳述書をもって答弁に代えるというのは、異例の対応であることは間違いない。しかし前述したような状況を受けて、陳述書をもっていったん事実関係を整理したい、とする高市総理の心情もよく理解できるのではないだろうか。
しかし野党サイドは、そうは受け取らなかったのである。こうした高市総理の対応ぶりを不誠実とし、さらなる衆参両院での集中審議や党首討論を要求するに至ったのだ。ここ近年、「対決よりも解決」をスローガンにスキャンダル追及路線と決別した国民民主党が躍進したこともあって、この種の路線は下火となっていた。ところが今国会では、旧立憲民主党をルーツとする、衆院の中道改革連合や参院の立憲民主党が相次いでスキャンダル追及路線に大きく舵を切ることとなった。
とは言っても、今国会で野党が追及している疑惑はあまりにも筋が悪い、というのが大方の見方だ。野党サイドとしては、かつては「文春砲」で一世を風靡した週刊文春が報じたことで、安心してそのネタに乗っかったのだろうが、これが思わぬ誤算を生んでしまった。それというのも週刊文春や共同通信が動かぬ証拠として報じた誹謗中傷動画の中に、明らかに捏造されたものが含まれていたからに他ならない。
もっとも週刊文春はそのことを指摘され、訂正と公開した動画の削除に動いたが、謝罪や記事の全面撤回に応じることはなかったのである。まさに往生際の悪い対応としか言いようがない。
いずれにしても高市総理を国会で追及するにあたって、週刊文春を根拠、材料にするのはかなり危ないという意識が国会議員たちの間で広まりつつあることは間違いない。そうした意味で週刊文春を片手に安直に政府与党を追及することができた時代が、いよいよ終焉に向かいつつあると言っていいだろう。
しかし野党サイドには、この一連の疑惑追及に関して矛を収めるつもりは毛頭ないようだ。政府与党が集中審議や党首討論に応じなければ、政府が提出する法案の審議には応じられない、と息巻いている。
果たしてこの野党は、この「疑惑追及」のゴールをどこに設定しているのだろうか? いくら「誹謗中傷動画疑惑」と言ってみたところで、今に至るも該当する動画の現物が出てこない。ネット上どこを探しても、その「魚拓」すら見つけ出すことができないのだ。
とはいえ皮肉を込めて言うならば、今国会でほとんど見せ場を作ることができず、各種世論調査の結果を見ても支持率低迷に苦しむ野党にとって、ようやく自らの存在感を示すチャンスが巡ってきたと言えなくもない。そのチャンス、つまり「誹謗中傷動画疑惑」に飛びついてしまう気持ちもわからない訳でもない。
しかし野党はここで一歩立ち止まって考えるべきではなかったか? 中道改革連合に所属する国会議員に聞いたところ、一連の疑惑を追及することに関しては、党として取り組むことが機関決定されたという。果たしてこの選択が正しかったのかどうか。その答えはほどなくして出てくる。中道改革連合や立憲民主党の支持率がアップしていたならば、疑惑追及路線を選択したことは正しかったとなるだろう。
その結果が出てくるのが、今から楽しみだ。































