日本の2025年の国民一人当たり「名目」GDPの世界ランキングは38位で、韓国を下回っている。無論、円安の影響もあるのだが、それ以上に「デフレーション」が主因ではある。デフレの国は、生産者が生産する付加価値の「価格」が下がっていく。結果的に、名目GDPは伸びず、一人当たりGDPは低迷せざるを得ない。
加えて、GDPには統計的な欠陥がいくつもある。例えば、以前の中国のように、「誰も住まない住宅」を建設するだけで、GDPは増える。理由は、住宅建設の際に建設会社の「建設サービス」が生産されるためだ。その後の「居住されるか否か」は統計に出ない。
つまりは、自分で住むわけではない、投機的な住宅投資が拡大しても、GDPは成長してしまう。もっとも、投機的な住宅投資はやがてバブル化し、崩壊する。
さらに、国民を「不幸」にする支出が増えても、GDPは増えるのだ。
国内の治安が悪化し、犯罪者が増え、刑務所が多数、建設されれば、GDPの投資という需要項目が増加する。さらに、刑務所に看守が多く雇われれば、公務員増加というわけで、政府最終消費支出という需要項目が拡大。経済成長達成というわけだ。
国内でフェンタニルなどの麻薬が氾濫し、医療サービスの生産が拡大すれば、やはりGDPは成長してしまう。さらに、医療保険の価格がつり上がれば、保険サービスの生産が増えたことになり、少なくとも名目GDPは増えてしまう。
戦争が勃発し、兵器が使用され、軍需産業が増産に入ると、当然ながらGDP成長となる。何しろ、兵器という「モノ」が生産されていくことになるのだ。
お分かりだろうが、治安悪化、麻薬蔓延、保険料激増、戦争による需要増、これらは全て現在のアメリカで起きていることだ。国民が不幸になる支出が増えたとしても、GDPは成長する。そういう統計なのだ。
加えて、GDPは生産された付加価値の「質」は表現できない。
90年代の携帯電話と、現代のスマートフォンが同じ価格だったとしよう。両機器がユーザーに提供するサービスの質は、文字通り「桁違い」になるだろう。ところが、GDPの金額的には同じなのである。あるいは、薄型テレビのように、価格が継続的に下落していくと、「品質は向上しているにもかかわらず、GDPは減少する」という現象も発生する。
もちろん、筆者は日本の国民一人当たりGDP「世界一」を目指すべきと考え、そのために活動している。とはいえ、GDPが世界一になったとしても、国民が豊かになっているとは限らないのだ。
ところで、GDPといえば、支出面のGDPは「基本」足し算だ。

図は、2025年の日本の名目GDP(支出面)である。民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備、政府最終消費支出、公的固定資本形成、在庫変動、そして輸出を「足し算」する。すると、合計は800兆円を超えてしまう。日本の「国内」の付加価値の生産の合計が、800兆円超ということだ。
とはいえ、輸入については、日本の「国内」の生産ではない。というわけで、支出面GDPにおいて輸入は控除項目、つまりは「引き算」になるのだ。25年の日本のGDPは、国内の生産の合計である811兆円から、輸入147.6兆円を差し引き、664兆円と計算される。
GDP統計において、輸入が控除項目であることを理解した上で、現在の状況について考えてみよう。イラン戦争の影響で、ホルムズ海峡が封鎖されている。結果的に、輸入物価は世界中で「一方的」に上昇している。
輸入総額が一方的に増えると、控除項目が拡大することになり、名目GDPは「縮小」方向に向かう。総需要の縮小、つまりは「デフレーション化」だ。
一般的に、輸入物価が上昇すると、国内物価も上がると思われている。確かに、消費者物価指数は上昇するが、GDP統計では輸入という「控除項目」が大きくなるため、総需要の不足というデフレ化が進むのである。
結果的に、総需要不足というデフレーションと、消費者物価上昇が同時に発生することになるわけだ。これが行き着くところまで行き着くと、いわゆる「スタグフレーション」となる。経済のデフレ化で失業率が上昇するにもかかわらず、物価は下がるどころか、むしろ上昇するのだ。




























