前回は、文部科学省が2月に発表した「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)」について、2040年という近未来が目標として掲げられている点が画期的だと紹介した。
なにしろ、教育の在り方について未来を明確な目標に据えて議論した結果の基本方針は、中曽根康弘首相が首相直属の審議会を設けて1987年に結論を出した臨時教育審議会答申まで遡らないといけない。このときは現在われわれが暮らす2020年代が目安だったのだから、次の時代を見据えなければならぬのは必然とも言える。
実は、2040年を未来目標にしているのは文部科学省だけではない。この年がクローズアップされたのは、20214年に「日本創成会議」が、一層深刻化していく少子高齢化・・生産年齢人口の減少・地方の過疎化についての2040年の予測(前号①)を「市町村が消滅する!」と衝撃的な形で発表し、当時の安倍晋三内閣は政府内に対策組織を新設するとともに担当大臣(初代は石破茂)を任命したのが始まりだ。
2025年6月には、経済産業省が「2040年の就業構造推計」を次のように予測して発表した。
① 2040年に十分な国内投資や産業構造転換が実現する場合、人口減少により就業者数は約6700万人(2022年)から約6300万人となるが、AI・ロボット等の利活用やリスキリング等により労働需要が効率化され、全体で大きな不足は生じない。
② 一方で、職種・学歴・地域間では需給ミスマッチが生じるリスクがあり、事務職(約440万人)や文系人材(約80万人)が余剰、AI・ロボット等利活用人材(約340万人)を含む専門職や現場人材(約260万人)、理系人材(約120万人)が不足する可能性。
これに基づき、就業構造を転換していこうというのである。
また今年4月には、財務省が「人口減少社会の中での総合的な国力の強化」を発表し、2040年を予測した対応を求めている。
これによれば、「総人口は、2008年をピークに減少。生産年齢人口は、それより早い1995年をピークとし、総人口より速いペースで減少する見込み」であり、「特に、2020年以降は、その前の35年間よりも速いペースで減少すると見込まれている」とし、「こうした人口減少社会に適応しつつ、我が国の総合的な国力を徹底的に向上させることが必要」というのだ。
そのため必須の対応として、
①社会資本整備、農林水産、地方財政、文化の4分野における財政資源の効率的配分
②文教、医療・介護、成長戦略、農林水産の4分野における人材力・経済力の強化
③防衛力の強化
――を提言している。
文部科学省関係だと、①の関係で、国立美術館、博物館が「展示事業に係る自己収入の割合」について2030年度までに65%の目標が設定され、さらに、次期中期目標・計画期間中(35年度まで)に100%を目指すこととされた。また、当該割合が29年度までに4割を下回っている等社会的に求められている役割を十分に果たせないと考えられる館については、再編の対象とすることとされている。
また②の関係では、高等教育の規模の適正化が唱えられ、「2040年までに、少なくとも学校数は250校程度、学部定員は18万人程度の縮減が必要と推計される」との指摘があった。文化と教育は国民に身近な分野であるためマスコミが大きく取り上げて議論を呼びつつある。
このように、「2040年問題」とも言える未来像が間近に控えている。
2040年には、今年産まれた子どもが14歳、小学1年生は20歳となる。これから14年間にどのような学びを提供するかは、新しい時代を生きるこの子たちの人生を左右するわけだ。
高校教育のグランドデザインや、現在検討中の2030年度から小学校、31年度から中学校、32年度から高校と順次実施予定である次期学習指導要領の責任は重い。われわれ国民全体は、きちんと動向を理解し、展開を見守っていく必要がある。
同時に、、現在総人口の約半分を占めている51歳以上の方々は皆高齢者になるのだ。医療・介護は日に日に切実なものとなってくる。そして社会資本整備、農林水産、地方財政、成長戦略、防衛力は全世代に共通の利益や損害をもたらす。今まで通りでなんとかなる、などという安易な考え方では到底乗り切れない。
後14年だ。その間にこの国の様々な課題をどう処理していくのか。国の主権者であり有権者として政治を動かすわれわれが担う責任は重大なのである。




























