前回、「全ての機械設備はロボット化する!」と称して、15年近く前に私が提案した「ロボット発展段階説」を簡単にご紹介した。その要点は、次の3点だった。
- すべての機器とあらゆる装置設備がロボット化する
- ロボットとは、アクチュエータ(駆動系=作業系+動力系)、コンピュータ(計算・記憶の頭脳系)、センサー(感覚系)が三位一体化したものを指す
- ロボットは電子的制御を前提にするので、制御系に価値が集中する
このロボットが生成AIと組み合わさるとどうなるのだろうか?
自律的に自学自習を行う「生成AIロボット」
生成AIは良質で的確なビッグデータを必要とする。従来、そのビッグデータは、人間が外部から生成AIに提供し、それを基に生成AI自体の性能は高度化してきた。
従来型のロボットは、その稼働データを基にして、ロボットの外部で人間がAIを使ってソフトウエアを開発、改善・改良し、それをロボットに実装して稼働させている。
従来型ロボットでも、ロボット全体や各パーツのログデータ(稼働記録)を蓄積して、外部の人間に渡し、それを人間が制御系のソフトウエアの開発や改善・改良に活用しているのだ。そして、ロボットが、個別具体的な状況にとって最適稼働をするように制御しているのである。つまり従来型のロボットでは基本的に、ソフトウエアの開発や改善・改良は「ロボット外部の人間が行うこと」が前提にあったのだ。
だが、このようなロボットと生成AIが一体化するとどうなるのか。
まず人間が生成AIロボットに、「自ら動き、そのデータを自ら取得して、そこから自らソフトウエアを改善・改良し、それを基にして再び自ら動いてみよ」という螺旋循環的な活動をするような制御ソフトウエアを組み込む。
それが初期値となって、まずアクチュエータが動き、その動きに自らのセンサーが働いて、自らの動きに関するデータを取得する。つまり、生成AIロボットに実装された生成AIが、生成AIロボットが自ら動くことを通じて得た稼働データを基にして、自らを制御するソフトウエアを改善・改良・高度化していくようになるのだ(ちなみに、システム論的に言えば、従来は1次のフィードバックループだったものが、生成AIロボットは一気に3次のフィードバックループまで高次化したシステムだと言えるだろう)。
これは、ロボットが生成AIを組み込まれることにより、「試行錯誤」を通じた「自律的学習」が進められるようになったことを意味する。結果、「生成AIロボットは、自らが動くことを通じて、自ら効果的・効率的な動き自体を効果的・効率的に律するソフトウエア自体を学習的に開発する」のである。つまり、生成AIロボットの最も特徴的な重要点は、このように「自ら動いて・自ら学ぶ」「自律的・即時的自学自習」することにあるのだ。
現在の「機械と人間の関係」を表す3つのテレビ番組
以上のことは何を意味するのか。
第1は、本連載でも度々触れたように、現在、人類はCPS(サイバーフィジカルシステム)の時代に突入しているということ。つまり、デジタル情報のサイバー系とモノのフィジカル系とが融合する社会に移行中なのだ。その観点から言えば、生成AIロボットとは「生成AIがサイバー世界を飛び出してフィジカル世界でロボットと組み合わさった典型的CPS」だと理解できるのである。
第2は、技術と技能の関係を変えてしまうということだ。どういうことか。
「現在」の機械と人間の関係を端的に表しているのは、NHKテレビの3番組、『探検ファクトリー』『ウルトラ重機』『解体キングダム』であると私は考えている。
『探検ファクトリー』 生活周りのモノづくりをする工場を、芸人・中川家とすっちーが“探検”する工場見学のバラエティー番組。高度な技術や職人技を紹介して、“日本のモノづくりの底力”“働く人の情熱”を紹介すると謳っている。訪問先の工場は、道具によって工芸的な生産をウリにする町工場でも、最先端のハイテク機器を駆使して大量生産を行う大企業の大工場でも、必ずどこかに熟練技能者が見事な技を披露する工程がある(グッジョブ!)。
『ウルトラ重機』 超大型で先端的な作業を行うユニークな重機(世界各地で活躍する巨なコンバインからガントリークレーン、新幹線のメンテナンス用ハイテク重機等)を俳優・田辺誠一が案内する番組。特筆すべきは、どの重機であっても、ミリ単位の繊細さで機器を操る驚異的操縦者がいることだ。つまり、先端技術の粋と言える巨大な重機(ロボット)の操縦には、成熟した高度技能を持つ職人が必要なのである。
『解体キングダム』 超重要・貴重な建築物を繊細な技術を用いて解体するドキュメンタリー番組。巨大なオフィスビル、超高層ビルからガスタンクや首都高まで、あるいは巨大変圧器から漁船取締船や特急列車まで、それらの解体作業に密着して、日本の解体技術を紹介する。この「モノばらし」番組でも、最先端ロボット重機を操縦するのは、極めて高度に習熟した職人である。
(ちなみに私は講演会等では、「過去」の機械と人間の関係について、チャールズ・チャップリンの『モダン・タイムス』(1936年)を紹介する。「未来」については、スタンリー・キューブリックとアーサー・C・クラークのSF映画『2001年宇宙の旅』と、士郎正宗のSF漫画『攻殻機動隊』を紹介する。後者はハリウッド製の実写版もあり、現在も他の漫画家が再三リメイク版を描いている。これらは、人間と機械・ロボットとの関係を深く洞察した作品だ。機会があればご紹介したい)
さて、上記の3番組を観ていると、現在の日本や世界のモノづくりとモノばらしは、技術と技能の連携によって成立していることがよくわかる。それは、どんなに高度な技術の粋である機械設備・ロボットであっても、習熟した繊細な操縦やキメ細かな仕上げといった「技能」が求められることを意味するのだ。
では、その高度な技能の開発と習熟はどのようにするのか。また技能の継承はどうするのか。多くのモノづくり現場では、技能者の高齢化問題と技能継承問題が話題である。実は、それらの問題への対処に関して、生成AIロボットは大きな貢献が期待されるのだ。その議論は、次回に。
(本項つづく)























