この原稿は、参院選の真っただ中というタイミングで執筆している。従って当たり前の話だが、選挙結果はまだ出ていない。まず、そのことをお含みおきいただきたい。
そもそも今回の参院選はいつもの参院選とは大きく性格が異なる選挙だ、というのが筆者の基本的な認識だ。それというのも今回の参院選は、事実上の「政権選択選挙」となっているからに他ならない。
改めて指摘するまでもなく、通常「政権選択選挙」と言ったならば衆院選のことを指すのは常識だ。なぜなら衆院で多数を占めた政党、グループから首相が選任されるからだ。
しかし、昨年秋の衆院選では異変が起こった。
その異変とは、自民党と公明党の獲得議席数が過半数割れとなったにもかかわらず、政権交代が起こらなかったという状況のことを指す。なぜ政権交代に至らなかったのか。その理由はいくつかあると思われるが、最大の理由は野党が一枚岩になることができなかったからと言っていいだろう。
この結果、少数与党に転落した自民、公明両党は予算案や法案を可決、成立させるたびに野党への譲歩を重ねてきたのである。与党にとって先の通常国会での国会運営は、まさに綱渡り状態にあったと言えよう。
もし仮に参院においても与党の議席数が過半数割れとなった場合には、自公連立政権の国会運営は完全に行き詰まることになるのは明らかだ。そうなった場合には、間違いなく自公政権は新たな連立パートナーの確保に動いてくることになるはずだ。
確かに自民、公明両党を除く各党が、連立政権の樹立に動く可能性だって必ずしもゼロではない。しかしそれは現実問題として、不可能に近い話だろう。なぜならイデオロギーや国家観が全く異なる政党が連立を組むことなど、普通に考えて無理な話だからだ。
具体的には、日本維新の会と共産党が手を組むことができるのかということに他ならない。
そうなると起こりうる可能性の高いシナリオとしては、自公を中心とした新たな連立の枠組みが形成されることだろう。しかしこれとて、そう簡単には事は進まないはずだ。なぜなら全有権者のうち6割を占めるとされる無党派層のかなりの部分が自公政権、特に石破政権に対して強い嫌悪感を持っているからである。
筆者は、今回の参院選挙の取材を進めるにあたって実際に選挙現場を歩いてみたり、ユーチューブ配信のコメント欄から有権者の生の声を拾ってみたところ、多くの有権者がいかに今の自公政権に厳しい目を向けているかがはっきりとわかった。自公政権は、これまで自公政権を支持してきた、主として組織化されていない無党派層の有権者から三行半を突きつけられているということが、有権者の声に耳を傾けている中で見えてきたのである。
このことを前提とすると、参院選の結果がどうであれ、石破退陣はもう既に視野に入ってきていると見ていいだろう。
少なくとも次の衆院選は新しい体制で臨むべきだ、というのが自民党内の大勢であることは間違いない。しかしそうなってくると、そんな足元がフラフラな状態の石破政権に加わろうとする政党が現れるのかどうか、甚だ疑問だ。
野党各党、特に新たな政権の枠組みに加わる可能性のある立憲民主党、日本維新の会、あるいは国民民主党など各党は、横目で次の衆院選をにらみつつ、石破政権との間合いを測ってくることになるだろう。つまり、あまり距離を縮めてしまったならば、次の衆院選で有権者から手痛いしっぺ返しを食らうことは確実だ。
しかし自党の要求を石破政権に飲ませることで、有権者にアピールし得点を稼ぎたいはずだ。衆院で過半数割れしている自公政権だからこそ、交渉次第では大きな果実を得ることができるだけに、前述の主要野党3党としても自公政権との全面対決は避けてくることになるはずだ。
つまり結論から先に言えば、次の衆院選を経なければ政治情勢が一定の安定を取り戻すことはないはずだ。
実を言うと、こうした状況を踏まえているからなのか、自民党内では年末解散のシナリオが静かに、しかし確実に浮上しつつあると言っていいだろう。もちろんそうなった場合の自民党の看板は、決して石破茂氏ではない。
そうなってくるとまず注目すべきは、参院選後の自民党内の動きだ。このまま行けば、どう転んでも党内で石破政権の責任を問う声が大きくなってくるのは確実。もし仮に石破総裁の辞職ということになれば、一体誰がポスト石破に就任するのか。そしてそのことを受ける形で、一体いつ解散・総選挙に踏み切るのか。
参院選挙後の政局には要注目と言っていいだろう。政治の季節は、まだまだ続きそうだ。























