改めて指摘するまでもなく7月の参院選で大惨敗した自民党だが、こうした選挙結果を受けてもなお、石破茂首相は頑なまでに続投する意向を崩さないことから、自公政権が大迷走状態に陥っていることについては、読者の皆さんもよくご存じのことと思う。
 果たして9月に開催予定になっている臨時国会は石破政権で臨むことになるのか、それとも自民党は新総裁を選出し、新体制で臨むことになるのか、この原稿を執筆している8月末の段階では全く見通せない状況になっているのが実情だ。
 昨年秋の衆院選での大敗、それに続く今年7月の参院選での大敗を受けて、当然のことながら石破政権は退陣せざるを得ない状況に追い込まれた、というのが多くの政権関係者の一致した見方だったと言っていいだろう。
 ところが、石破首相はここから予想外ともいえる粘り腰を見せ、8月末に至るもその職に居座り続けている。とはいえ少なくとも自民党内では石破続投を支持する国会議員は、圧倒的に少数派であることは間違いない。
 しかし、自ら辞める気のない総理総裁を引きずり下ろすことは現実問題として至難の業だ。その唯一の手段と言えるのが、自民党の党則に基づいて自民党所属の国会議員および都道府県連の過半数以上の賛同を得て、総裁選挙を任期満了前に前倒しで実施することだ。もっとも仮に「臨時の総裁選」が実施された場合でも、現職総裁は所定の条件さえ満たせば出馬することが可能なのだ。
 いずれにしても現在自民党内では、臨時総裁選を実施するか否かの意思決定手続きを行っている段階だ。
 それにしても石破首相の身の処し方は、はっきり言って見苦しいの一言に尽きる。直近2回の国政選挙でこれだけはっきりと民意が示された以上、潔く退陣を決断するのが憲政の常道だ。いくらメディアが実施した世論調査の結果で、「辞める必要がない」が「辞めるべきだ」を上回ったとしても、それは必ずしも絶対的な民意ではない。やはり何と言っても選挙結果こそが、最も正確で絶対的な民意の表れであることは間違いない。
 一国の首相たるもの、やはり選挙結果に真正面から向き合うべきだろう。そもそも自公与党は衆参両院で過半数割れとなってしまったため、本来だったら野党に転落していても不思議ではない立場だ。にもかかわらず政権交代が起こらないのは、野党の連携が全く機能していないからに他ならない。つまり自公両党が今に至るも政権与党の座に座り続けていられるのも、あまりにも不甲斐ない野党、中でも野党第一党の立憲民主党の政権奪取への意欲の無さに助けられている側面が強いと言えよう。
 とは言うものの秋の臨時国会においては、今と全く異なった政治情勢になっている可能性が高い、と筆者は見ている。まず石破政権は、遅かれ早かれ終焉を迎えることになろう。今の石破体制のままで総選挙に突入することを良しとする自民党衆院議員や立候補予定者は、ほとんどいないはずだからだ。その理由は至って簡単だ。昨秋の衆院選、今年6月の東京都議会選、そして7月の参院選と直近3回の重要選挙で大敗、惨敗を喫した石破政権だけに、次の国政選挙で勝てる見込みはどこにもないからに他ならない。はっきり言って、選挙の看板にもなり得ないトップを担ごうという現職議員はどこにもいない。
 そうなるとポスト石破は、選挙の顔として間違いなく通用する人物が選ばれるはずだ。しかし、それだけで決まるわけでもない。それと言うのも、秋の臨時国会以降の国会運営において、自公政権は野党の協力が絶対に必要となってくるからだ。つまりポスト石破は、衆参両院で過半数に達する形で野党の協力が得られる人物ということになってくるだろう。
 その際に対象となってくるのは、立憲民主党、もしくは日本維新の会、あるいは国民民主党の3党のいずれかということになろう。確かに参政党は、先の参院選で大躍進を遂げたものの、衆院議員はまだわずか3人にとどまっているため、自公与党が参政党と連携したとしても、衆院では過半数以上を確保することができないからだ。
 つまり自公与党は、前述の野党3党の中からどの政党と組むのか、ということが問われることになり、ポスト石破に選ばれる人物は組むべき野党とワンセットの形になってくることになろう。逆に言えば、組むべき野党を確保していない総裁候補は、その実施が確実視される自民党総裁選で脱落することになるはずだ。そうした意味でも、次の自民党総裁選は過去の総裁選とは、全く異質のものとなってくることになるだろう。
 以上述べてきたことからも明らかなように、日本の政治情勢は大転換点を迎えたようだ。「自民党一強時代」は間違いなく終焉を迎え、新たな政権の枠組みの構築へ向けて動き始めたといえよう。