26年間にわたって自民党の連立パートナーを務めた公明党が連立解消に動くなど、政権発足にあたって紆余曲折はあったものの、高市政権がスタートを切ってから1ヵ月がたった。
 その間、高市早苗首相の国会答弁に対して中国側が激しく反発し日中関係が大きく冷え込むことにはなったものの、マスコミ各社の世論調査を見る限りにおいては、日本国内ではほとんど高市批判は起こらず、内閣支持率は相変わらず高い水準を維持したままの状態が続いていると言っていいだろう。
 こうした状況を受けてのことなのだろう今、永田町ではそう遠くない将来に高市首相は解散・総選挙に踏み切るのではないか、という見方が急速に広がりつつある。
 筆者がつい最近、中国地方に取材で訪れた時のこと。案内役を務めてくれた若手県議がこう筆者にささやいた。
 「須田さん、ちょっと見てください。ここ最近になって地元選出の国会議員が与野党を問わず、一斉にポスターを新しいものに切り替えたんです。しかも、ポスターの枚数も増やしているんです。総選挙が近いのではないでしょうか?」
 また、政権与党と激しくやり合っている野党の現職国会議員が筆者に電話を掛けてきて、「やはり、近々解散はあるのでしょうか?」と問うてきた。
 政治の世界でたびたび語られるフレーズに「選挙は、勝てる時にやるものだ」というものがある。確かに内閣支持率という一点で見た場合には、高市内閣のそれは発足以来、極めて高い水準で推移しているのが実情で、解散の大権を持つ首相にとってみれば、その権力を行使する誘惑に駆られてもおかしくない状況であることは間違いない。
 加えてマスコミ報道でも、早期解散、具体的には「1月解散」を唱える観測記事がチラホラと出てくるようになった。まだまだ微風ではあるけれども、解散風が吹き始めていることは間違いない。
 果たして早期解散、具体的には「1月解散」はあるのだろうか?
 もちろんその答えは、高市首相の胸の内にしかない。そして高市首相がその胸の内を明かすようなことは、今の時点では絶対にないだろう。
 従って、今ここで確実な答えを読者の皆さんに示して見せることは絶対に不可能なのだが、取りあえず筆者の得た情報や分析をご提供させていただきたく思う。
 高市首相と長きにわたって行動を共にしてきた側近がこう言ってみせる。
 「高市は言われているようなタイミングでは、解散に踏み切らないと思いますよ。なぜなら、自民党が総裁選を実施したことで1ヵ月以上にわたって政治的空白を作ってしまった、その結果やるべきことは山積している、従って選挙をやっているような時間的余裕はない、と高市は言っていましたから」
 そしてここで言う「やるべきこと」とは、恐らく景気・経済対策のことを指しているのだろう。その点に関しては、筆者自身の以下に紹介するエピソードに基づくものだ。
 この秋に実施された自民党総裁選が終盤に差し掛かった時の話だ。高市氏が筆者に以下のように語ることがあった。
 「このまま何も有効な手を打たなければ、年が越せない小零細企業や低所得者層が続出することになりかねない。総理・総裁になってまずやるべきことは、そうした企業や人たちをしっかり支えるための景気経済対策を策定することだ。しかし、時間的余裕はあまりない。早急にそのことに取り組みたい」
 この言葉からうかがえるのは日本経済、そして景気動向に対する高市首相の強烈な危機感だ。こうした危機感があったからこそ、高市首相は就任直後に総合経済対策の策定に動き、一般会計の歳出比ベースで17・9兆円に及ぶ(前年の補正予算と比較して3・9兆円増)大型補正予算を編成したのである。
 この補正予算に関して言えば、当初財務省は14・0兆円で着地させる腹づもりだったことは間違いない。しかし高市首相がそれを差し戻し、自らの強い意向のもと、3・9兆円が上積みされることとなったのである。
 しかし、この結果に高市首相は決して満足していないはずだ。なぜなら高市首相が目指していたラインは、歳出費ベースで20兆円というところにあったからだ。
 だとすると、高市首相にとって次の勝負どころは、次年度予算案をめぐる攻防だろう。具体的には、この予算案を年度内にしっかりと成立させられるかどうかに高市政権の命運はかかっているといえよう。こうしたスケジュールを前提に置くと、総選挙を実施できるだけの時間的余裕は、予算が成立するまで見当たらないのだが、果たして高市首相の判断やいかに。