高市早苗首相がまさかの通常国会冒頭解散に踏み切ったことで、年明け早々の政界は大激震に見舞われることとなった。
 そしてそうした混乱ぶりについては、支持率低迷に苦しむ立憲民主党と公明党が一気に新党、「中道改革連合」の結成に動いたこと見ても明らかだろう。もし高市首相が仕掛けたサプライズ解散が無かったとしたならば、新党が結成されない可能性すらあったと言っていい。なぜなら新党を結成するにあたって公明党が立憲民主党に対して突きつけた条件を、立憲民主党はすべて丸呑みするという驚きの展開となったからに他ならない。
 中でも驚いたのは、「(集団的自衛権の行使を可能とする)平和安全法制が定める存立危機事態における自衛権行使は合憲」とすることを立憲民主党サイドが受け入れた点だ。
 そもそも立憲民主党は、2015年に成立した平和安全法制については「違憲部分の廃止」ということを党是としていたはずだ。というよりも立憲民主党の「立憲」の意味するところは、この法律が憲法違反であり、立憲主義に基づいた政治を行うべきだというメッセージが込められていたことは誰もが知るところだろう。
 つまり立憲民主党所属の議員は、その結党の精神をかなぐり捨てて新党の結成に動いたと言える。まさに驚き以外の何物でもない。
 新党の党綱領、そしてそれを具体的な政策に落とし込んだ新党の政策集の取りまとめにあたっては、完全に公明党が主導する形となったのだという。まさに小(公明党)が大(立憲民主党)を飲み込むを地で行く新党結成劇だったと見ていいだろう。
 もちろん立憲民主党サイドが、公明党に対して前述したような全面的に譲歩したのかというと、それは改めて言うまでもなく公明党のバックに控える創価学会の強力な集票力に大きく期待したからだ。
 ここ最近の立憲民主党の政党支持率は、どのマスコミの世論調査を見ても10%を割り込む水準に低迷し、国民民主党や参政党をも下回る水準に低迷することもたびたびという惨状を呈し、このままの状態で解散・総選挙に突っ込んでいったならば、惨敗必至の情勢にあったと言っていいだろう。いくら労働組合、連合の支援があるといっても、全有権者の六割弱を占めるとされる、組織化されていない無党派層を相手候補より少しでも多く取り込まなければ、とてもではないが当選することはおぼつかない。
 しかし前述したような10%を割り込むような立憲民主党の政党支持率では、同党の候補者が当選を果たすことはかなり厳しい状況にあったことは間違いない。だとすると各選挙区で1万から2万票あるとされる創価学会票は、立憲民主党の候補者にとって、それこそ喉から手が出るほど欲しい存在なのだ。
 そしてそれゆえに、立憲民主党の候補者は一斉に雪崩を打って「中道改革連合」への参加に動いたのである。
 もし仮に立憲民主党の目論見通りに、創価学会票が立憲系候補者の得票に上乗せされたならば、高市首相率いる自民党にとっては大きな脅威であることは間違いない。もともとは自分たちに上積みされていた創価学会票が、公明党の連立離脱によって引き剥がされただけでなく、対立候補に回ってしまうことで二重のダメージを受けることになってしまうのだ。もしこのことが現実となった場合には、相当な数の自民党公認の候補者が選挙区で落選することになるだろう。
 しかし立憲民主党サイドの思惑通りにコトが運ぶかどうかについては、実際の選挙結果が出るまでは予想がつかないというのが筆者の率直な受け止め方だ。
 筆者の得ている情報では、公明党系の候補者が上位に並ぶ比例区については、創価学会サイドもかなりの熱量の支援体制で臨むようだが、立憲民主党系の候補者によって占められる選挙区については、この原稿を書いている選挙戦序盤の段階ではそれほど熱心ではないようだ。
 今回の衆議院選挙に関して言えば、創価学会票の行方がキャスティングボードを握ってはいるものの、その行方がさっぱり見えてこないのだ。
 しかしその一方で高市政権の内閣支持率はかなり高い水準にはあり、過去のパターンであれば高市自民党が圧勝してもおかしくない状況にあることも事実。なぜなら有権者の約六割を占めるとされる「組織化されていない無党派」の投票行動は、ほぼ内閣支持率に比例するという過去の経験則があるからだ。
 とは言え自公連立政権の解消という大きな変化を受けて、そうした過去のパターンが今回もそのまま踏襲されるかどうかは、これまた選挙結果が出てみないことには分からないのが実情だ。
 いずれにしても、日本の政治状況がまったく新しい局面に突入したことだけは事実のようだ。おそらく今回の衆院選は我々有権者に多くのことを示唆してくれるに違いない。選挙結果には要注目だ。