気象庁は、2024年の日本の平均気温が平年に比べ1・48℃高く「異常な高温だった」とし、1898年の統計開始以降、観測史上最も暑い年になったと発表しました。
また、世界気象機関(WMO)は25年1月10日に、24年が観測史上最も暑い1年であり、世界全体の気温が産業革命以前と比べて1・55℃上昇したことを確認しています。
本年も世界の猛暑は続き、日本の6月、7月は観測史上最も暑く、8月前半には「観測史上最高」を更新する41℃台の酷暑を記録しました。日本の記録的な高温は人為的な温暖化がなければ起こりえなかったと東大や京大の研究者が分析しています。
多方面に甚大な損失が発生
気候変動は各国のインフラにも打撃を与えます。豪雨や干ばつなどの異常気象の頻発は道路や水道、送電網など既存のインフラに甚大な被害をもたらし、経済的損失も深刻です。将来の異常気象に耐えるインフラの整備・維持への投資も必要になります。
『日経新聞』(7月3日付)によれば、現状のまま気温上昇が続けば、作物の不作が続き、2035年まで食料のインフレ率が年間最大約3ポイント増える恐れがあるとのこと。また異常気象がインフラに打撃を与え、巨額の経済損失をもたらすと警告しています 。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書によると、気候変動による世界のインフラの損失額は、平均気温が2度上昇した場合に2100年に4・2兆㌦(約600兆円)に上ると推計されています。
スイスの気温上昇は2倍速
人為的な気候変動による気温上昇は、地球のあらゆる地域に影響を及ぼしていますが、一部の国では、他の国よりも温暖化が速く進んでいます。そのような国の一つがスイスです。
スイス気象庁によると、スイスで温暖化が進む速さは世界平均の2倍です。2014~23年の世界の平均気温は産業革命前(1871~1900年)に比べ1・3℃上昇しましたが、スイスでは2・8度上がりました。過去30年の平均も同じ傾向で、世界は1・0℃、スイスは2・1℃上昇しています。
気温上昇で、既にスイスに住む人々や農業、景観などにも大きな影響が出ています。頻発する猛暑は、特に高齢者に深刻な健康被害をもたらし、農作物の収穫を大きく左右する不安材料です。山間部では氷河や永久凍土の融解が進み、自然災害のリスクも高まっています。
チューリヒ大学などの研究によると、世界の氷河は00~23年に年間で平均2730億㌧減少し、約1・8㌢㍍の海面上昇を引き起こしたと推計されます。25年5月にはスイス南部のアルプス山脈で、氷河の崩壊によって大規模な土石流が発生し、築600年の家屋が並ぶ歴史ある村が土砂に埋め尽くされました。
「永久凍土」として知られる凍土層の融解は、地盤を不安定化させ、山岳地帯のインフラにも影響を及ぼします。
永久凍土の融解は、山小屋、雪崩防止施設、ケーブルカー、ロープウェーなど、凍結した岩盤の上に設置されることの多いインフラや建物に甚大な影響を与えます。スイス山岳会が昨年発表した調査報告書によれば、同会が所有する152棟の山小屋のうち3分の1以上が永久凍土融解の危機にさらされており、その他永久凍土帯に起因する土砂災害リスクに脅かされているものは42棟に上ります。
スイス連邦環境省の推定によれば、スイス国土の6?8%が永久凍土融解により不安定な状態にあり、永久凍土帯の下方集落では今後、地滑りや土石流が多発することが予想されます。
国境を超える氷河融解被害
地球温暖化により、近い将来スイスの氷河はほぼ全て消滅すると予想されています。最新の予測モデルによれば、温室効果ガス排出量が大幅に減らない限り、スイスの最も標高の高い地域の氷河ですら2100年までに消滅します。土砂災害・洪水の頻発、欧州主要河川の水量減少、水不足の深刻化など、その影響は広範囲に及びます。
アルプス氷河は、ライン川、ドナウ川、ポー川などの西欧州の主要河川の水源でもあり、その融解水は、スイス南西部ヴァレー(ヴァリス)州、ジュネーブ州、フランス南部を通り地中海へと注ぐ欧州主要河川の1つ、ローヌ川に流れ込みます。ジュネーブ州を流れるローヌ川の水の約3割は氷河からの融解水であり、その割合は干ばつになると更に増えます。フランスではローヌ川の水を20ヵ所の水力発電所と原子力発電所の原子炉4基の冷却に利用しています。
地球温暖化で氷河が解け続ければ、広範囲にわたり多くの影響が出ます。アルプスの景観は激変し、あちこちに新たな湖が出現し、地滑りや土石流などの土砂災害や洪水がより頻繁に起こるようになり、高温で乾燥する季節の水不足はますます深刻化します。スイスアルプスの氷河融解の影響は国内にとどまらず国境を超えて海にまで及ぶのです。
(本稿のスイスに関する記述は、SWI swissinfo.ch japanese@swissinfo.chに依拠しています)























