一方、米国では、トランプ大統領がパリ協定のみならず、気候変動枠組条約や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)からの脱退を表明し、そのエネルギー戦略は、「(化石燃料を)掘って掘って堀りまくれ」の掛け声の下、再生可能エネルギーの支援を撤回し、液化天然ガス(LNG)輸出や石油・石炭の振興を中心としています。
地政学リスクを専門に扱うコンサルティングファームであるユーラシアグループ代表のイアン・ブレマーは、「米国が20世紀のエネルギーを買うよう世界に求めている間に、中国は21世紀のインフラを提供している」と説いています。
太陽光発電の価格は、2010年以降、世界的に約90%低下しました。このことが、現在アフリカの生活と経済を大きく変えつつあるのです。
カエル飛び型発展へ
アフリカでは約6億人が依然として電力にアクセスできていない状況下で、遠隔地や人口希薄地域への国家送電網の延伸は遅く、極めて高額です。ところがオフグリッドおよびミニグリッド型太陽光発電が、農村部の電化において最も安価かつ迅速な選択肢となったことにより、携帯電話が固定電話を飛び越えたように、太陽光発電は地域社会が化石燃料による送電網を完全に飛び越えること(いわゆるリープフロッグ(カエル飛び)型発展)を可能にしているのです。
安価な太陽光発電の導入は、アフリカの人々の福祉の直接的な改善をもたらします。健康面では、灯油ランプを代替することで室内大気汚染と火災リスクを低減し、教育面では夜間学習の照明が可能となり、学校でのコンピューター・インターネット利用も実現します。また、太陽光発電ポンプが清潔な飲料水の供給と灌漑を可能とし、医療面では、診療所でのワクチンの冷蔵保管、診断機器の稼働、夜間診療も可能になるなど、極めて低コストで、健康状態の改善、進学率の向上、平均寿命の延伸を実現できます。
さらに太陽光発電は新たな経済活動を可能にし、地域での起業を促進し雇用を創出します。多くのアフリカ経済は輸入化石燃料に多額の支出をしているので、太陽光発電の導入によって、燃料輸入が減り、貿易収支が改善され、財政負担軽減にもつながります。
そもそもアフリカ大陸は日照や風力に恵まれ、再生可能エネルギーの導入余地が非常に大きいところです。最近では大規模太陽光・風力、住宅向け・商業向けの分散型ソーラー、そして離島・農村向けのミニグリッドやソーラーホームシステムが同時に伸びています。ただしその進展は地域差が大きく、資金・送電網設備・政策面のボトルネックが依然として存在します。
2025年には、アフリカ諸国で中国製ソーラーパネルの輸入が一気に拡大しました。同年、アフリカ諸国は中国から過去最多となる発電総量1・57?㍗分のソーラーパネルを輸入し、25年1月からの5ヵ月間で、少なくとも22のアフリカ諸国が前年同時期を超え、大半の国が輸入量を前年の2倍に増やしています(エネルギー問題専門の国際シンクタンク「Ember」による)。と同時に、中国への過度な依存が課題として浮上しています。
アフリカ諸国の今後の課題
アフリカの再生可能エネルギー導入は今や「局地的な成功」から「エネルギー転換の主流」へと移行しつつあります。
南アフリカでは、エネルギー危機からの脱出手段として太陽光発電が導入され、大規模なユーティリティー規模の太陽光発電が石炭火力発電容量を代替し、住宅・農場・工場の屋根上太陽光発電、企業がエネルギー供給を確保するため直接太陽光の調達が進められています。
ケニアでは、金融とデジタル技術が電力網の拡張を待たずに大規模なエネルギーアクセスを実現する道筋を示し、オフグリッド太陽光発電と従量制モデルの世界的リーダーとなっています。
ナイジェリアにおいて太陽光は、脆弱な電力網環境下での経済的生存と競争力に関わる課題としてとらえられ、ディーゼル燃料を代替し、中小企業の成長とコスト削減につながりました。
太陽光ミニグリッドの普及や設備導入の加速は、電化率向上と経済的な利益をもたらす一方で、資金調達の難しさ、系統制約、政策・制度の未整備、品質管理と廃棄問題、地域間格差といった多面的な課題を抱えています。とりわけ導入の恩恵が都市部や資本力のある地域に偏るリスクがあります。最も深刻な電化不足は中央・西部アフリカに集中しており、格差是正を意図した政策が必要です。
急増するパネルの輸入が再エネの普及を支える一方、低品質の製品やアフターサービスの不足、廃棄・リサイクルの課題を生む可能性があり、ローカルな保守能力と廃棄物管理の整備が求められます。さらに中国からの輸入に過度に依存することから様々なリスクも懸念されます。
加えて、一部の国や地域では政治的不安定や紛争が続き、安全対策・資産保護が不十分だと投資は限定的になるため、地域固有のリスクを織り込んだ設計が必要です。中長期的な安定と持続可能性は、送配電網の強化、制度改革、人的基盤とサプライチェーン構築に依存します。
アフリカが再エネを通じて持続可能な発展軌道に乗るかどうかは、これらの課題をどう解決できるかにかかっています。アフリカの再エネを軸とした発展への日本のかかわり方も問われています。
























