動物病院でドッグトレーナーとして働いていると、「ご褒美はおやつをあげれば良いですよね?」という質問をよくいただきます。確かに食べ物はわかりやすく、犬にとっても魅力的なご褒美でしょう。
しかし、実はご褒美の種類は“おやつ一択”ではありません。おもちゃで遊ぶこと、飼い主の声かけや撫でてもらうこと、好きな場所に行けること、自由に走り回れるスペースや安心できる環境を与えること、怖いものから距離を取ることなども、犬にとって立派なご褒美になります。
犬の学習を促すうえで大切なのは、「正しい行動の直後にご褒美を提示すること」です。例えば、「おすわり」が上手にできたら、その瞬間にご褒美を与えることで、「座ると良いことが起きる」と理解します。タイミングが遅れてしまうと、犬はどの行動が評価されたのかわからず、学習が進みにくくなります。人間が思う以上に“行動と結果の結びつき”の時間幅は短いのです。
もう1つ忘れてはいけないのは、「望ましくない行動の後にもご褒美が与えられてしまっているケースがある」という点です。
例えば、犬が吠えたときに飼い主が抱き上げると、「吠えると構ってもらえる」と学んでしまうことがあります。また、リードを引っ張った結果、行きたい方向へ進めてしまえば、それも犬にとって「引っ張れば行きたい方向に行けた」というご褒美です。私たちが意図せず“好ましくない行動を強化”してしまう場面は少なくありません。
ご褒美は、犬との関係を築き、学習を助ける大切なツールです。ですが使い方を誤ると、望まない行動を強めてしまうこともあります。ポイントは、「ご褒美のバリエーションを広げること」と「タイミングを逃さないこと」、そして「無意識にご褒美を与えていないか、人側の行動を見直すこと」です。
犬はとても素直で正直な動物です。望ましい行動に対して適切なご褒美を重ねることで、少しずつ私たちの望む行動を身につけていきます。飼い主の工夫次第で、日常の中にたくさんの学びのチャンスが生まれます。ぜひ今日から「ご褒美の力」を意識してみてください。






















