総選挙で消費税が大きな焦点となっている。
 もともと日本の消費税、生まれや育ちが全て不運で、日本経済を痛めてきた。
 この問題は、政治、経済、文明、科学、高齢化、家庭環境、夫婦関係など社会全般に深く関係するものであって、単に「欧米の消費税の概念」などを基準にして単純に考えてはいけない。
 でも日本は、ノーベル経済学賞の候補者も出ないということでもわかるように、世界的に名前が通った経済学者、著作物も皆無であることも原因して、日本全体が「経済音痴」であるとも言えるほどに、消費税の議論がトンチンカンなのである。

[E:スタートからまずかった

 まず第1に、消費税を始めたのが1987年4月1日と、バブル経済が崩壊した1991年の数年前という最悪のタイミングだったということだ。
 経済学というものの価値は「予測」にある。だから、最悪のタイミングで消費税を始めたということ自体が、日本の経済運営の感覚の悪さを示している。
 そして第2に、「消費税」と「所得税」に関する欧米人の感覚と日本人の受け取り方が違うということだ。これは双方の「文明」の差であって、経済の問題ではない。

継続性重視の日本文明



 例えばアメリカと日本とでは、家庭の財産の運用に大きな「考え方」の差があることはよく知られているし、再々、指摘されてもいる。
 日本人は自分の財産の半分を「預金」で持っているが、アメリカはちょうど同じぐらいの比率で株などの運用を行っている。つまり、日本の文明は「継続性」を最重要しているのに対して、アメリカやヨーロッパの文明は「瞬間的な最適化」を考えていると言える。
 この事は単に財産の運用の考え方が違うのではなく、文明の差、人生の考え方の差によって起こっていることであって、制度の変更などではにわかには変わらない。
 例えば勤務形態においても、日本は現在でも終身雇用に対する執着心が強く、世論調査でも若い人を含めて終身雇用を良しとしている。
 これに対して、欧米では終身雇用などは雇用される人の方でも歓迎せず、4年程度の限定的な雇用契約を好む傾向にある。
 さらに、先祖と自分、子孫とのつながりに重きを置いて家庭生活も人生設計も築いていく日本と、18歳になれば親の家から独立して自分ひとりの人生を生きていく欧米とは大きく違う。
 企業においても、長い寿命の企業の信頼性が高い日本と、その時代時代を反映する企業が評価される欧米との違いがある。また文化などでも、過去と現在とのつながりで築き上げていく日本は、世界でも著しい特徴を持っている。
 これらが経済に反映してくるので、消費税の社会的影響も当然ながら大きく違うわけである。
 アメリカは建国以来、「所得税」に対して非常に抵抗があり、19世紀まではむしろ関税などの他の税収で政府経費をやりくりし、所得税は長らくゼロであった。
 これに対して、日本では「国民の義務としての所得税」という意識が強く、むしろ積極的に所得税を払うことによって、自分がお国に貢献しているという感触を持っていた。
 このように社会における「国家への貢献、継続性」を重んじる日本と、瞬間的な「自己の損得と速度」を考える欧米との差は、極めて深く、経済の問題としてだけで税金の問題を考えてはいけないことを意味している。

日本独特の構造



 また、関西の経済同友会のデータでは1990年までは日本国民が働いて新たに獲得した総所得は、働く人と経営陣に分配され、さらに設備投資などの将来の投資に向けた後、極めて少額が株主に分配された。
 このような構造が日本の高度成長を支え、所得が倍増し、会社の発展を呼んだ。しかし2000年前後から株主、外資への分配率がどんどん上がり、日本の発展性が阻害された。
 これは、本来は長期的な発展を望む日本の資本主義の基本概念に反して、「渡り歩く不良資本」を優遇する結果となった。
 さらに、「みんなで国を支えよう」という世界でも珍しい日本独特の平等思想、報国思想に基づく、「人生、死ぬまで。それから子に繋ぐ」ということから「早期退職」が進んだ。日本人は決して早期退職を望んでいない。
 日本社会の統計の基準になってきた100年前の1920年、日本人の平均寿命は男女ともに43歳であり、その時の一般的な会社の退職年齢は55歳だった。
 その後、寿命は40歳余も長くなったのに、定年は再雇用を入れても10歳しか伸びていない。日本人にとっては辛い老後が30年も加えられただけで、「遊び」が得意ではない日本人と日本社会にとっては辛いことになっている。
 それにも関わらず、「老後のため」に福祉予算を増やさなければならないという実に奇妙なことが行われたのである。
 消費税の廃止には、常に日本人と日本社会の希望や方向に矛盾し、アメリカ人になれと言っているような議論が続いているが、それは「より優れた社会をより劣った社会にかえる」という逆方向の政治に違いないと思う。