日本の政治の混乱が続き、経済活動も見劣りがしてきた。それを何とかしようと政治改革や経済刷新などが盛んに議論されているが、日本の不得意なところから改善するよりも、日本が得意とするところに目をつけた方が早道ではないだろうか。

広がる貧富の格差


 明治維新以来、日本の発展は世界的に見て目覚ましいものであった。日本は黄色人種の国だが、世界の有色人種の居住地域のほとんどが白人の植民地になって呻吟していたにもかかわらず、日本だけは独力で独立を維持し、大東亜戦争などの大きな災厄を乗り越え、高度成長期を経て、G7という世界をリードする先進国の一員となった。
 このことが現在の日本人の生活の質や幸福にとって、極めて大きな役割を果たしたことは当然である。また日本は社会的な差別なども少なく、多くの国民が良い生活ができ、幸福な人生を送れていることについても、ほとんど異論がないだろう。
 しかし、国家の基幹となる憲法が自主的なものであるかは疑わしく、国防もアメリカに依存している。そればかりではない。日本に限ったことではないが、政治は必ずしも感心できるレベルにはなく、経済も近年は不安定であり、短期的には繁栄していると言われることもあるが、「日本人の住宅はウサギ小屋だ」と言われたりして生活のクオリティーは必ずしも良くない。
 そして最近では世界に共通した問題であるが、政治がお金で乱れていることや、国民の生活格差がかつての封建体制の時よりも開いているのではないかとの議論も出てきた。つまり日本では徳川時代の武士と農民の格差より、現代の大企業経営者と一般国民の収入格差の方が大きいのではないか――という疑いである。
 確かに、アメリカやヨーロッパの貧富の差の研究をしている研究機関のデータを見ると、社会の1%程度の富裕層の人たちの収入や資産と、一般国民の平均的な収入や資産と差は著しく大きい。極端に言えば、富の大半が富裕層に支配されていると言えないこともない。

240年の実験成果は


 今から既に240年ほど前になるが、フランス革命、アメリカの独立戦争などによって、封建主義もしくは絶対王政などから民主主義へと社会制度が変化したとき、「自由、平等、民主」という基本的な考え方は、確かに理想的ではあるけれども、現実に国民の知識力や責任感、人間の本性に基づく嫉妬心とかズルというものを考えると、必ずしも良い社会制度ではないのではないか――という疑いが指摘されていた。
 その後、世界は240年をかけて壮大な社会実験を実施してきたことになるが、それによって社会の格差がさらに増大しているということになると、「自由・平等・民主」を基礎にした現代の社会体制に問題があるのではないかとも考えられる。
 最近のアメリカにおけるトランプ大統領の登場や、急激に変化する関税、大国によるさまざまな戦争などを見ると、確かに〝現実性のない制度(民主主義体制)〟で社会が運営されていると考えてもよいと思われる。

社会制度を補ったもの


 しかしながらこの240年、実は社会制度の不備を十分に補ってあまりある別の面での進展があったから、結果的に時代が進歩しているように見えたと考えることもできる。
 それが「科学技術による社会の大規模な変化」だ。
 18世紀末から考えると、高圧蒸気機関の実用化、電気の発見と電灯やモーターの発明、さらに19世紀末になると、内燃機関の発明と自動車の実用化や工場での自動運転の進歩、戦後には家庭電化製品やコンピューターや携帯電話、その他さまざまな民生品の技術発展が著しく、世界は大きく変化した。
 もとより18世紀のフランス革命時代の様相と現代の社会を比べると、とても比較にならないほどの大きな変化があり、その変化にふさわしい社会になっているということができる。つまり、世界の人々の生活の変化は、社会体制の変化にあったわけではなく、むしろ技術の発展が生んだものだと考えられる。
 事実、1990年代における世界的な共産主義国家の衰退や、日本におけるバブルの崩壊などは、需給関係の基本的な変化、技術の変化による社会通念の改革がもたらしたものと言えるだろう。
 特に日本では、民主主義はヨーロッパからの借り物であったが、科学技術の進歩は欧米を上回るものがあり、特に新幹線や自動車のような輸送機器、電子通信機器や家電製品、さらには建物建築、橋梁やトンネルなどの社会インフラ技術など、日本が世界をリードしてきた技術と産業分野は目を見張るものがある。
 それに対して憲法をはじめとした法律体系、国際政治などを含む政治力、社会システムなどは、日本はあまり感心したものではなく、現在でもやや欧米に追従したり、グローバリゼーションや会社制度に見られるようにむしろ外国の後塵を拝してウロウロしているところがある。
 この際、政治とか経済、社会体制など日本が不得意なところをうんぬんするのではなく、思い切って日本は得意な科学技術で勝負した方が良いように思う。